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『離婚して欲しいって、言ってるんです。』
「……なぜ今なんだ?あと一年半、一緒にいる約束は、」
『約束、なんて…最初からめちゃくちゃだったじゃないですか』
これから先…たくさん酷いことを言う私のことを、どうか許して欲しい。いや、恨んでもいい憎んでもいいから─…引き止めないで。
『子どもがいる…って、分かってたら結婚なんてしなかった』
「あやねっ…どうして急に、」
『急じゃない…半年考えた。考えて一緒に居たけどやっぱり無理だって思ったの』
──…この半年間、辛かったのは本当だよ
今日、この日の為に生きた半年間は…人生で一番苦しい期間だった。
『半年くらい前に、私…スーツを汚して帰ってきたことがあったでしょ?』
「……仕事でっ、外で打ち合わせに、」
『あの時…相手の人にイラストのことを酷い言われ方をして腹が立ってカフェを出たなんて嘘をついたけど…本当はその逆。実力を認められて海外で仕事をしないかって、大きな仕事の依頼をされて─…』
嘘だよ、そんな大きな仕事をわざわざ素人同然の私に依頼する人間なんているはずが無い。
『でも、私には律希さんと実夏ちゃんが居るから…無理だなぁって諦めたんだけど、よく考えたら離婚するし…諦める必要無くない?って思えてきてっ、』
「…あやねっ、」
『私は─…前にも言ったことがあると思うけど、自由に生きたいの。結婚するつもりだって無かったし、恋愛だっていつも適当だった』
篤郎のことがなければ、結婚するなんて考えられなかったのは本当だよ。自由に生きたかったのも事実。─…律希さんに出会うまでの私は。
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