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「あや姉がいない時は、ミナがパパを支えてあげるって、約束したの!だからお風呂の洗い方もお洗濯の回し方も知ってるよ!」
そこまで言われて初めて…この半年、絢音はこの日の為に念入りに準備をしていたのだろうと察した。
自分が出ていったあとの俺と実夏の生活のことを考えて、実夏にできる限りのことを教えていたのだとしたら…一体どんな気持ちで、、
「……パパ?どうして泣いてるの?痛い?」
──…泣いてる?俺が?
無意識に頬を伝っていた涙に触れ…自分の愚かさを呪った。絢音が居なくなったなんて考えられないっ…どうして俺は、こうなる前に彼女の心の変化に気付くことが出来なかったのだろう
「……パパ?」
実夏に笑顔を向ける余裕なんて全くない。やっぱり今更─…絢音ナシの生活なんて俺には到底出来そうに無い。
昨夜─…俺に離婚届を突きつけた絢音は、行かないで欲しいと縋る俺の手を取ることはなく…その後すぐに家を出て行ってしまった。
荷物も少しずつ処分していたのか…いや、それ以前に元々少なかった絢音の私物。それをキャリーケースひとつにまとめて、鍵を置いて出ていく彼女の後ろ姿を…黙って見ていることしかできなかった俺は本当に惨めで愚かな人間。
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