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てっきり、絢音も俺と同じ気持ちで居てくれているものだと思っていたせいで…今のこの現状にただただ呆然とする。
突然すぎて、なんの心の準備も出来ていなかった。絢音のいない生活なんて…やはりどうしたってもう今更考えられない。
【もう一度、会って話したい】
この一言のメッセージを送るのにかなり時間がかかった。俺はどこまでも臆病な人間らしい。絢音に出会うまで自分がこんなにも情けない男だとは気付かなかった。
よく絢音は俺の事を”鈍感”だと言っていたが、本当にその通りだと思う。一緒に生活をして毎日顔を合わせていたのに…俺は彼女がこんなにも早く離婚を考えているなんて夢にも思わなかったのだから。
既読のつかないメッセージを眺めながら、出勤の時間になったので家を出る。「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれる絢音の姿がないことに…胸が痛む。
本音を言えば今すぐにでも、絢音を探しに行きたい。それでも立場上…仕事を放棄して身勝手な行動を出来るような人間ではないということは自分自身、一番よく分かっている。
結局─…
絢音から返信が来ることはないまま、離婚届に判を押すことも出来ず…ただ時間だけが無情にも過ぎ、、何一つ解決出来ていないまま週末を迎えた。
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