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第一章 「 橘 マキ 」
短い針が7、長い針が1を丁度指していた。
ジリリリリ……
目覚まし時計が鳴り響く。
ベッドの上で寝ている少女が寝返りをうった。彼女の名前は橘マキ。今年で19歳の自称美少女だ。
バタバタと階段の駆け上がる音がしたかと思うと、マキの部屋が勢いよく開いた。
部屋に入って来た男は、慌てて目覚まし時計を止める。そして、大きな声で未だ目覚めないマキに向かって怒った。
「今何時だと思ってんだ!いつまで寝てんだ!夕飯の時間だから、いい加減起きろ!」
この男は、橘 直人。
橘家の次男。几帳面でしっかり者である。
因みに、マキは末っ子である。
寝返りをうって気付く様子の無いマキを見て、直人は溜息を吐いた。
そしてまた怒鳴ろうとした時、音楽が鳴り出す。それはマキのスマホの着信音だった。
スマホの画面に表示されたモノを見た瞬間、直人は無表情に変わったかと思うと、すぐに表情を戻した。寝惚けた顔のマキが目を擦りながらベッドから起き上がっていたからだ。
マキはパチパチと瞬きを繰り返す。
「あれ?お兄ちゃんが二人いる…」
ふわぁ、と欠伸をした瞬間、直人の拳骨がマキの頭へ直撃した。
「痛い…」
直人が去った後、頭をさすりながらマキは涙目で呟く。そして、7時5分を指した目覚まし時計を見て目を瞬かせた。
「あれ?まだ朝の7時じゃん。なんで怒ってんだろ、直兄。」
不思議そうに感じながらパジャマを着替え、階段を下りてリビングへと足を進めた。
そう、7時5分。夜の、7時5分である。
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