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本堂の中は真っ暗で、ノゾムが開けた扉から差し込む光でしか辺りを確認することができない。
「う……っ!」
ノゾムは言葉を詰まらせた。
その光で照らされたのは、大量の人形やぬいぐるみ。ショーケースの中のそれらとは違い、腕がちぎれてたり、片目がなかったり、どこかしら壊れている。
その壊れたもの達の奥から歌声は聞こえてきた。
中に入らないとその状態はわからない。
ノゾムはその暗い中に入って行く。
足元は砂っぽく、ジャリジャリとなった。空気はほこりっぽくて、大きく息をすると噎せそうになった。
壊れたもの達を踏まないように、慎重に進む。
突き当たりの光が届きそうな所から歌声は聞こえていたのだが、ノゾムがそこに辿り着く瞬間、歌声が止まった。
「……あれ?」
歌声を頼りに歩を進めていたノゾムは困った様子。
おかしいなと方向転換をすると、足にガツッと何かがあたった。
気をつけて進んでいたはずなのに蹴ってしまった、とノゾムは焦り、当たったものの確認をする。
外から届く僅かな光りに、当たった正体は五十センチ程の小さなガラスケースが横たわっているとわかる。
しかしそれには、大きなお札が貼られてあった。まるで、その中のものを逃がさんばかりに。
ノゾムは、その中身が気になり、両手でそれを立ててみた。
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