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4.
周りが薄っすらと明るくなり始めた…
しかし、足取りは重く動き出す気に慣れ無い…
昨日事…恐怖と悪臭が身体の中に少し残っていたが…
陽が上がり明るい事から気持ちは昨日よりは高揚していた。
ここ果たして何処なんだ?
このままここに居る事はできない…
俺は重い身体と気持ちを奮い立たせ改札を出る事した。
改札を出るには、キップを渡すなどをするが…
昨日の改札口横の事務所の様な室内に人気を感じる事なく…
「すいません…すいません…」
俺は大きな声を出し駅員を呼んだが応答は無かった。
しかし、訳のわからない重苦しい空気、理解できない現実、まだ頭も身体もこの世界?が受け入れられないでいた。
「なんでこの世界に来てしまったのか?」何度も同じことばを繰り返していた。
どう考えても答えが出ない?
訳のわからないこの世界、全てを認められない自分がいた。
俺はいつもくすぶりながら生きてきた。
この場に居なくても、全てを認めたくなかった。
認めるのが怖くて逃げていた…
「何処に居ても同じだなぁ…」
俺がそんな独りごとを口走ると…
昨日の職場での飲み会の情景が蘇った。
それは…4月…
期がかわり桜も散った頃、毎年恒例となっている…
職場での行事幹事交代の為の宴会であった。
年が経つに連れ、世代交代が余儀なくされ…
仕事への熱意が薄れていることに気付かされる…
「なんで俺がこんな待遇に…」
俺は仕事への熱意が薄れている事を上司に見抜かれ…
宴会に参加はするが…
この宴会はいつもしらけたものだと捉える様になっていた…
俺は不満の捌け口をぶつけられず、聞いてもらえそうな人に、愚痴っていた…
上手くいかない、嫌な事ばかりをよく考えるようになっていた。
チャンスを生かせず出世を逃し、願望意識だけが強くこれまでやって来たが…
俺はもうじき49を迎えようとしていた…
ふと昨日のことが頭を過ぎった。
「かみさん、俺が居なくて心配してるだろうなぁ?」
帰りたいと切実に思った…
すると…
訳もなく涙が流れていた。
それは、今の寂しさと今迄の自分の甘さの後悔からか…
心が虚しさに占領され、涙が止めどなく流れてのであった。
そんな時、穏やかな口調で誰かが俺の脳裏に…
「逃げるな…逃げるな…」
怖じ気づいている気持ちを断ち切るかのように…
今度は強い口調で…
「逃げるな!逃げるな!」の声が心に響いた。
その声は…
親父の声だった!
「逃げるな」は生きて居た頃の親父の口癖だった…
俺が弱気になると、この言葉で諭された。
俺の何処かで、何かがふっ切れたような気がした。
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