まえがき

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5. 親父の口癖「逃げるな!」が脳裏に投げかけられてから… 今迄の俺とは違う何かが覚醒していた。 得体の知れない場所に来てしまった… 怖い、物凄く怖い… しかし… ここで逃げても、どうにもならない! 何がなんだかわからない… この世界? この次元? ひょっとすると俺は死んでいるのか? ここはあの世か? まあ、どうでもいいか! なぜか気力が腹の底から湧き上がって来た! もう逃げない! 全て観てやろう…全身全霊を持って! 年甲斐もなく自分の中の好奇心が蘇った。 改札には誰もいない無人である。 時間が早いせいか? 電車の動きを感じ取る事が出来ない。 そもそもこの世界で電車を利用しているのか? 俺はそんな独り言を心の中で呟きふと顔を上げると… 「おや、昨日の改札事務所は?」 「おかしいなぁ?」 独り言を呟きながら歩き出した。 すると本当の改札口は二階にあり… そして出口までの通路には窓がなく… 駅内は高い塀で密封され… 駅外の景色がよくわからない状態であった。 無人であるためそのまま改札口を出た。 そして地上に降りる階段に向かった。 階段を降りると不思議と足の運びが速くなった気がした… 「気がはやり加速がついたのか?いや!違うぞ」 手足の動きがいつもより、せわしなく気持ちより先に進む。 深呼吸をして足を出す前に「右足、左足…」と確認してから歩いてみた。 すると、何とかいつもと同じように歩くことが出来た… 「まあ何とかなるか?」 そう独り言を呟いた。 この駅についてから、いつもより時間の経過が早く感じる? それは、昨日から今朝まで眠らずにいたからだ… 夜が明けるまでそんなに時間が経った気がしない? 眠気が襲ってこないのだ… 時計を見ると相変わらず長針の進みが早い… もうすぐ6時になろうとしていた。 改札口からの階段を下りきり地上に着くと… 目の前に… 想像を超えた情景が待ち受けていた。
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