まえがき

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8. 地上に目を向けた俺は… 今まで生きていて観たことのない情景が広がっていたからだ… そして、表現できる言葉が頭の中から消え… 俺の頭の中に… 8ミリ映写機で映すモノクロ映画を観ているような情景に変わった。 それはかなり昔の記憶のようで… 親父がシーツをスクリーン代わりにして映写機を回していた… でも、モノクロ映画の内容が思い出せない… ただ、ただ何か昔の感覚が胸を熱くするが… だが… そんな気持ちを打ち消すように… 空から真っ黒いものが落ちてきて… 大きな爆破音と共に、目の奥が真っ赤になっていく錯覚に襲われた。 「ハァー、ハァー」と深くため息を吐いた。 我に返り、ゆっくり眼を開けた… するとそこには、おぞましい情景が待ち構えていた。 テレビ塔の様なビルに繋がる真っ直ぐな道路2、3キロ?ぐらいの道程に何かが順序正しく並べられていた? 遠くばかりを観ていたせいか 「そのもの」を確認していなかったのだ? 「どうしてこんな事に?」 それは紛れも無く「人」であり… 屍であった。 転々と並べられた屍は、一番近いもので約5、6メートル先にあった。 屍は道路両端に置かれていた… その屍を直視したくなかったが、不思議と意識するようになってから目入り… 避けることが出来ない。 意志はあまり伴わないが足が動き出していた。 何故死んで… 何故ここに置かれているのかわからないが、置かれている屍は穏やかな顔をしていた。 頭の片隅で、何処かで観た様な? 感じたような? 気がした。 「そうか…親父…」 と訳のわからい独り言を口走っていた。 穏やかな屍の顔を見て、親父の葬儀が思い出された。 親父は身体が弱く、若くして結核を患い、肺が一つ無く、肩甲骨にそって大きな縫い目があった。 見るだけで痛々しく感じられた。 そんな親父だったが、身体を惜しまず仕事に、付き合いに精を出していた。 親父は俺の誇りだった! しかし、片肺の無い親父にとって、楽ではなかったようだ。 付き合いによる酒と仕事による疲労から肝臓が弱り… 風邪の菌が肝臓に入り込み肝硬変から肝臓癌となり… 1カ月で死んでだのであった。 56だった。 死、直後は赤黒い顔色だったが、埋葬の時は血色も良く、穏やかな表情をしていたことが思い出された。 道路に並べられた屍の首を見ると、何か付けているのがわかった。 何か付けられている物はリングの様な首輪であった。 不思議にその先の屍も、その先の屍も、同じようなリングを付けていた。 すると突然エンジン音が聞こえて来た… エンジン音はブルドーザとトラックで… 手前の曲がり角から現れた。 ブルドーザーとトラックは屍を… 想像通りの事をしはじめたのであった。
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