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『こちらD班、発砲許可願います』
「発砲だと?待てD班、発砲は許可できない」
駅前でパトカーに乗ったまま待機すると、無線が鳴った。発砲許可を上に訴えていたようだが、それは許可できない。街中で発砲、それも駅なんて大騒ぎ・大混乱になりかねない。
『線路内に侵入。改札は通らず北へ逃走』
「D班、対応できるか?」
甘かった。そのまま改札から出てくると誰が言ったのか。
電車から出てきたとは言え、線路を横切って反対方向へと逃走したらしい。
『林の中に逃走確認。追います』
逃げた先は林の中。確かに航空隊でも林の中は追跡困難区域になる。出てくるところを確認するしかない。
「航空隊を警戒してか……。各班、包囲準備」
『了解』
だが林の周りは住宅街。
範囲は狭く、包囲できるだろう。
『D班から航空隊、位置わかりますか。どうぞ』
『こちら航空隊。出てくる影は見えない』
航空隊からの報告がないとなれば、林の中で息を潜めているに違いない。準備を整えて林の中へ行こうとするが……………。
『こちら航空隊、東側姿確認』
航空隊からの無線。まだ包囲できていない間に奴は出てきてしまったようだ。航空隊の投入は成功だ。すかさず状況報告を願う。
「また街中へ逃げるつもりか!」
住宅街とその先にはまた街中だ。
同じことの繰り返しになってしまう。
『警視庁より特殊部隊投入も検討とのこと』
警視庁に属する特殊部隊の投入が検討されているとのこと。俺は思う。机に座っている偉いのは良いなと、本当にこっちの状況を把握しているのか?
「そこまでする必要はない。我々で対処する」
そんなことされても無駄だ。余計に住民を混乱させる。その決定を待つように申し出た。
「奴は街中に逃げた」
『C班追います』
住宅街を抜けて、そのまま予測通りに再び街中へ。そろそろ良い作戦を考えねば意味がないだろう。
『街中で女性が凶器で襲われたとのこと』
「まずい、被害が出てしまったか!逃走中に余裕があるとは」
そんな時に、我々が追いついていないことを良いことに新たな事件を引き起したとのこと。良くそんな余裕があるなと思う。だんだん怒りが込み上げてきた。
『こちらC班、確保に失敗。中央通りを北方へ逃走。怪我人1名』
「怪我の状況は」
追っていたC班が確保しようとしたらしいが、残念ながら失敗し、警察官の一人が怪我をしたとのこと。だんだん被害は増えていく。
『命に別状はありません。腕から出血があります』
「ならば、そちらで対応してくれ。動ける者はそのまま追跡」
このままではまずい。最悪の場合、追跡打ち切りとの命令が出てしまう。
「いたぞ。各班に通達、包囲網展開せよ」
『了解』
そこで俺は作戦を考えた。
『現在、塀に登り屋根伝いに逃走中』
「各班に通達、大通りに追い込め。周辺道路を封鎖」
大通りまで追い込めたのであれば、1つの可能性があることに気付いた。
「逃げ足が早い……………。そのまま追うぞ」
『大通り出ます』
報告によれば大通りに向かっているとのこと。いいぞ、それならこちらの作戦を実行できるだろう。
「よし、そのまま北上させるように配置」
「どうするつもりですか?」
後ろを走る部下が聞いてくる。
作戦はこうだ。
「北上した先には、小さい地下駐車場がある。そこならば入り口は一つだ。追い込んで入り口固めれば逃げ場はあるまい」
普通の地下駐車場では、広くて出口も一箇所固定でなかったりする。大通りの先にある小さな地下駐車場を知っていたからこそ、そこならば追い込めると考えた。
『こちらD班、PCを乗り越えてルートから外れた。航空隊位置求む』
「大通りに戻せ。発砲は認めないが、催涙スプレーであれば使用を許可する」
発砲はまずい。だが催涙であれば効果ありで、追い込むことも安全にできるだろうと考えた。
ルートは外れたが、一本外れただけであればまだなんとかなるだろう。
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