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事件発生
『不法侵入の事件発生。現場へ急行せよ』
俺は片山恭助。警視庁刑事部第一機動捜査隊に所属する警部補だ。
賑やかな街中を巡回中に、予想していない事件の無線が飛び込んできた。
「不法侵入?詳細を教えてください。どうぞ」
ピコッと言う無線の音が鳴る。
『えー、場所は警察署』
「おいおい、冗談だろ」
どんな間抜けな奴かは知らないが、警察署に不法侵入なんて馬鹿げている。
警察署に侵入となれば、すぐに身柄を確保することが可能だろう。でも、無線に応じたからには向かわなければならない。俺は部下とともに警察署へと向かう。
「現場へ急行中。状況を報告せよ」
『犯人は現在逃走中。住宅街に逃げ込んだ模様』
無線を聞いて呆れる。「何やってるんだ」と無線のボタンを押す。
「犯人の服装は」
『黒色と茶色です。青ベルトを巻いてます』
いやいや、それだけじゃ何もわからない。だいたい警察署に不法侵入したやつを捕まえられないなんて警察として失格と言わざるおえないだろう。
「それだけじゃわからない。もっと情報求む」
『数日前に発生した通り魔事件に関係ありと思われる』
「なんだと?」
その情報を聞いて俺は確信した。「あいつか!」と。
最近街中で万引きが起きたり、主に女性が被害に会う通り魔事件が多発していた。俺はその犯人をずっと追っているのだが、なかなか捕まえることが出来ていなかった。数日間目撃情報がなく、足取りが掴めていない。
「現れやがったか。今日こそ捕まえてやる」
「最近多発している通り魔事件ですか?」
「そうだ。ずっと追っていたんだがな、まさか向こうから姿を現してくれるとは」
そいつが姿を現したとなれば、尚更現場へ行かなければならない。
ウゥゥゥ〜と、パトカーのサイレンが唸りを上げる。
『住宅街で発見。現在B班が合流』
「俺らも行くぞ」
奴は警察署で包囲されそうになったところを掻い潜り、住宅街へ逃げ込んだらしい。幸いここからだとそこまで遠くはないため、緊急走行で到達までは10分と言ったところだろう。
『大通りを南下中。至急向かわれたり』
すかさず無線が鳴る。
「先回りするぞ。その先左だ」
ハンドルを握っている部下に指示をしながら、奴の逃走ルートを予測する。先回りして絶対に捕まえてやる。
『C班、現場へ急行中。状況報告求む』
上からの指示だろう。追加で編成されたC班が現場へと急行しているとのこと。事は少しずつ大きくなってきていた。
「よし、ここで止めてくれ」
パトカーを降りて、ここからは走って向かう。細い路地を利用しながら最短最速で奴の元へと向かって行く。
「こっちだ」
後ろを着いてくる部下へ指示する。念のため警戒しながら予測された場所で、出迎える。
「いたぞっ!!!」
予測通りだった。
奴はこちらに向かって走ってきたが、こちらの姿を見て咄嗟に方向を変える。
「くそっ。奴はトンネルに向かった。B班先回りだ」
『了解』
細い路地を抜けて、大きめの通りに出る。住宅街を抜けた先にはトンネルがある。そこに逃げたのであれば挟み撃ちが可能だろう。
「もう逃げ場はないぞ」
そのまま一定の距離を保つようにして、トンネルへ追い込む。先にはB班が待ち構えているため捕まえられると踏んでいた。
「何!?抜け道か。奴は抜け道から逃走。C班追えるか?」
『無理だ。間に合わない』
しかし、奴は抜け道があることを知っていたらしい。それは完全に我々の予想外で、奴はその抜け道からトンネルを抜けて再び住宅街へ逃走した。
「奴は凶器を隠し持っている。くれぐれも住民の安全が第一だ」
通り魔事件では何人かの怪我人が出ている。
下手をすれば住民に被害が及ぶだろう。長引かせることはできない。
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