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弓道を始めたのは高校に入ってからだ。理由など特にない。 袴がかっこよかったから、とか探せばそれくらいだ。 ほとんどの中学に弓道部がなかったために、男女ともほとんどが初心者だった。同じスタートラインであることは、私にとって都合が良かった。 4月から6月に向けて筋トレと走り込みをして身体を鍛える。これは、弓を引くまでに体力をつけるためだ。腕や脚で踏ん張る力がないと、弓は引けない。これは後に痛いほど知ることになる。 静かな部活のイメージを持っていた私は、その時に弓道はであることを身を持って知ったのだ。 7月からぼちぼち弓を持つ同級生が現れ、監督の指導の元、矢の先端を丸めたもので練習を始めた。 まだ本番で引くことはできず、弓で形をとることが主に目的だった。室内に大きな偽的(にせまと)を置き、そこに向かって監督と一対一で指導を受ける。 しかし、それをできるのは監督の判断次第であった。私はまだ、そこに呼ばれることはなく、ひたすらゴム弓で練習を重ねた。 この時からぼちぼちと差ができていたことに、私は気づかなかった。
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