0人が本棚に入れています
本棚に追加
一度だけ、二人はこんな話をしたことがある。
「ねぇママ、パパは悪い人なの? 僕たちはどうして、こんなに悲しい思いをしなきゃいけないの?」
フラウはレディンが消えてから、弱音をほとんど吐かなかった。吐いたとしても、レディンを責めたりしなかった。
ニネットは逆に不安に思ったが、状況を分かっていないのだろうと安易に見ていた。だが、違うとその時知った。
「フラウ、パパはね、フラウや皆を助けたかったのよ。皆は分かってくれないけど、パパは頑張ったの」
「パパ、頑張ったんだね?」
「うん、だから私たちだけはパパのこと信じてあげようね」
「分かったよ。僕、パパを信じるよ。だって大好きだもの!」
全貌を知る人間は、ニネットを除き誰もいない。エトビアの人類全員が、レディンを悪人にする。
それでも二人は信じると決めた。正解か不正解かは分からなくとも。一生、報われなくとも。
自分達を守ろうとしてくれた愛する人を。
最初のコメントを投稿しよう!