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「おはようフラウ、早起きだな」
レディンとニネットは、夫婦揃って必ず朝に帰宅する。
現場で勤めるのは深夜のみだ。点検員による、一日一度の直接点検に合わせている。
帰宅してからはフラウと共に過ごし、交代で仕事もした。在宅ワークにすることで、常にフラウの傍にいられるよう努めた。
夫婦は、何よりもフラウを愛しているのだ。
「パパ、ママおはよう! ご飯並べておいたよ! 今日はママの好きなキルシュ!」
「ありがとう、じゃあ食べましょう」
エトビアでの食事は、主にドライフードだ。だから調理という概念はなく、開封すればすぐ食事にありつける。
なぜ、このスタイルになったかと言うと、純水が貴重だからだ。
雨の濾過も幾度と試されたが、全て失敗に終わった。ゆえに、今は人工でしか生み出せない物質と化している。飲み水として賄うだけで精一杯といった状況だ。
しかし、国民は水のない生活を当然としており、不自由さを唱える者などいなかった。
それこそ、先代の人々が歳月をかけ生活様式を整えてくれたお陰だ。囲われた国の中には、完全な安心があった。
だから、あんな出来事が起ころうとは、誰も想像しなかった。
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