0人が本棚に入れています
本棚に追加
選択
点検作業を終え、資料を製作する。気付きや終了時間などを記録しておくのだ。
この作業を済ませ、カメラでの最終確認。それから、朝の出勤者に引き継げば帰宅できる。愛すべき我が子の待つ家へ――。
「ねぇ、レディン。この辺りの映像、何か変じゃない?」
監視カメラは常に起動中だ。全ての点検が終わった今、映像は格子状に並んでいる。
ニネットは、ふと見た映像に違和感を覚えていた。それも、あの点検員と同じ違和感だ。ほんの些細な、けれど確かな違和感。
「言われてみれば、この辺りだけが明るいな」
並ぶ映像の、一部だけが他より明るくなっていた。映すものは変わらない。しかし、確実に色味が違った。
数時間前の一件が、二人の脳裏に蘇る。妙な胸騒ぎを覚えたため、一応カメラを動かしてみた。
すると、そこには衝撃的な光景があった。
「なんだこれは……火?」
映されたのは、燃え盛る炎だった。見たことのない光景に、重苦しい静寂が満ちる。
上空からのカメラでも、明確に捉えられるほどの火だ。かなりの大きさであると分かる。
呆然と見ていた二人だったが、ニネットがあることに気付いた。途端に冷や汗が溢れだす。それを見たレディンも同じことに気が付いた。
「フラウは!? フラウは大丈夫なの!?」
パニック状態のニネットを横に、全てのカメラの視点を下げる。映されたのは悲惨な光景だった。
炎は、町の一部を飲み込み燃えていた。大火災だ。静まる様子もなく、じわじわと範囲を広げている。
自宅を含んでいるブロックへと、勢いよく視線を向けた。映ったのは、まだ静かに眠る地だった。
「家までは届いていない……でも!」
自宅付近は現段階では無事だ。しかし、数分もすれば火の手が回る――そんな所にまで迫っていた。
最初のコメントを投稿しよう!