清四朗の苦悩・1

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清四朗の苦悩・1

 仕事をクビになったチヨを元気付けるためにフルーツパーラーへ連れてきてやった俺は幸せそうに頬張るチヨを眺めていた。 「桃うまい!アイスおいひぃ!バナナショートケーキも食べたい!」 「ああ。好きなだけ食え」  それにしてもよく食うな。バナナケーキで6皿目だぞ。朝飯食ったばっかだって言うからフルーツパーラーにしたわけだが喫茶店のほうが良かったか?  しかしながら口いっぱいにフルーツやアイスを頬張るチヨに色気もクソもない。なんで俺はチヨなんかが好きなんだ?  そのとき桃をかじるチヨの赤い唇から果汁が垂れて白い首を伝い胸元へと入っていった。 ――いや、色気はあるか。 「モダンガールでモガなあたしとモダンボーイでモボな清四朗がフルーツパーラーでパラパラパラって流行に乗りに乗ってノリノリだな!」 「パラってって何だよ?モガもモボも洋装しているヤツらのことだぞ。俺はモボじゃねぇしおまえもモガじゃない」 「メロンもうまい!清四朗も食え!」 「聞けよ」  チヨは目を輝かせながらフォークに刺したメロンの切れ端を俺の口元に差し出した。こいつは何も考えてないんだろうな。俺はチヨに挑発的な視線を向けながらメロンにかぶりついてやった。対してチヨは俺と目を合わせたまま固まった。 「目をギラギラとさせて獲物を狙う獣のようで少し怖いぞ。そんなにメロンが食べたかったのか?清四朗も頼めばいい」  俺の獲物はメロンじゃなくておまえだよ。 「俺は朝飯が遅かったからそんなに入らねぇよ。ここを出たらいい所に連れてってやる」
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