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電話を切ったノアは深い溜め息を漏らし、やる気のないジト目でカノシタを睨んだ。
「着替えて」
「…………は?」
「着替えろって言ったの。それともなに。萎えて縮んでるのにまだヤる気あるの?」
言われるまで、自分がタオル一枚だったことを忘れていた。先程の銃撃戦で取り乱し、そんなものの存在を忘れてしまっていた。
「とっとと着替えて。もう一回言わせたら、その汚いのぶち抜くから」
「…………なんなんだよ、お前」
「はぁ……。ま、もう一回ちゃんと自己紹介はしとくねぇ。ノアでぇす。主な趣味はVチューバーの推し活でぇ、職業は学生とぉ──殺し屋やってまぁす。よろしくね、カノシタ君」
カノシタの頭は、天地がひっくり返ったようにごちゃごちゃし過ぎて整理が追いつかない。
殺し屋?
こんな小娘が?
そもそも、これは現実か?
わざとらしい少女の笑顔も、部屋に転がっている死体も、広がる死臭と硝煙の臭いも、全てが現実と空想の狭間にいるようであやふやだった。
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