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二章 Nullis amor est sanabilis herbis.
うだつの上がらない男のカノシタは、出会ったばかりのぴえん系殺し屋女子のノアが運転する、ホワイトのジャガーF─TYPE75クーペに乗って東京を走っていた。カノシタは助手席で縮こまっている。彼自身、何故こういう状況なのかまだわかっていない。
そもそも、こんな少女が殺し屋だと言う。高級車を飛ばし走っている。何だ、この状況。車内に流れるアニソンが場の空気に全然合っていない。うまぴょいするアニソンは卑怯だろう。そんな雰囲気ではないし、心がぴょんぴょんしない。
「…………あの」
「なに」
「どこ向かってるんすか、これ」
「君が泊まってるホテル」
「…………さいですか」
何で宿泊しているホテルが把握されているのか考えたが、なにも浮かばないので考えることをやめた。「いや、マジでどういう状況なの?」と今でも思っていた。
「あのラブホ、あんなことして大丈夫なのか?」
「知り合いが管理してる、それ専用にしてたホテルだから問題ない」
「……死体とかってどうすんの?」
「処理専門のクリーニング屋に頼んだ」
ラブホテルを出る時、確かに「大川クリーニング」と名乗る白装束集団がやってきたのを覚えている。おそらく、それが処理専門なのだろう。
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