0人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日
開けて翌日、いつものように出所すると、やけに職員の皆さんが慌ただしく動いていた。一晩明けてすっかり忘れていたが、前日紛失したあの電卓がまだ見つかっていないらしい。
「もう一度しっかり探してくれよ。見つからなかったら一人一人の家に行って家宅捜索するぞ」
そう言った課長の顔は笑っているが、退所後のやり取りを知らない私にとっては、その笑顔が逆に恐怖を煽っているように感じてしまった。
私もすぐに机周りや引き出しを一通り再確認した。分かってはいたがやはり私のところには電卓はない。探索を終えて、いつも通りまさみさんに本日の作業の指示を仰いだ後、普段通りにその場を後にした。
いくらお気に入りとはいえ、その電卓は元々市の備品だし、いい加減諦めて新しいのを卸せばいいのに。
最初のコメントを投稿しよう!