翌日

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 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、いや当然分かっていたであろう課長の口から洩れたのは‥‥‥ 「プッ‥‥‥」  その一声が合図かのように、そこにいる職員が一斉に笑い出した。その瞬間全てを悟り、私はまさみさんを睨みつけた。ただ、まさみさんは笑ってはいなくて、なんだか憐みの表情を私に向けている。 「私はそんなことしたら可哀そうだって言ったのよ」  まさみさんはそう言うと、今度は課長に視線を投げた。 「ゆきこさんのこんなに蒼ざめた顔、初めて見たわ。課長、しっかり謝って下さい」 「いやあ輪田君、申し訳ない。ちょっとドッキリ仕掛けてみようと思ってやったんだが、まさかこんなに驚くとは思わなくて」  よくよく話を聞くと、今日のお昼過ぎに電卓は見つかったということだった。課長の机の上の分厚いファイルの間に挟まっていたが、それまでは探す時にファイルごと持ち上げて探していたために見つからなかったのだそう。  バツが悪かった課長は、その場の空気を何とかしようと咄嗟にこの悪戯を思いついたらしい。
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