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次の日の朝、早坂は本当に迎えにやってきた。
俺の母ちゃんが玄関のドアを開け、早坂を見て驚いたようで、「見たこともないくらいのイケメンくんがあんたの友達だって言って迎えにきたわよ!」と大騒ぎしている。
俺は慌てて支度を整え、玄関に向かうと、正真正銘の早坂が、俺の日常風景の中に立っていた。
「おはよう乃木。学校行こう」
本当に来るとは信じられない。あれは早坂を困らせるための言葉だったのに……。
朝から早坂は爽やかだ。俺と同じ制服を着ているのに、どうしてこうも違うのだろう。
「乃木、寝癖」
早坂はそっと俺の髪に触れてきた。正確に言えば俺の寝癖のついた髪だけれど。
「俺が直してやろうか?」
「いっ、いいっ! いつもこんなんだから!」
ダメだ。早坂に触れられると心拍数が爆上がりする。
「そ? 確かにそのままでも可愛いからいいと思う」
なんだそれは。褒めているのか?!
あー! 早坂と会話していると調子が狂う!
どうしてこんなに平常心でいられないのだろう。
俺が完全にイニシアチブをとりたいのに、いつも早坂のペースに巻き込まれていく。
「乃木? 可愛いって言われるの好きなの?」
「はぃい?! そんなことありませんけど?!」
俺は完全に早坂に負けている。このままじゃ流される!
何とか巻き返しを図らなければ。
とりあえずこのバクバクした心臓を抑えようと俺は呼吸を整えた。
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