4.本心

6/8
前へ
/21ページ
次へ
「俺は早坂からなんでこの高校に転校してきたかを聞いて、お節介かもしれないけど、告白ゲームをしようって言ったんだ」 「どういうことだ?」 「三ヶ月経ってもろくに話もできないって早坂が言うから、告白ゲームってことにすれば早坂もやりやすいかなと思って、あんなことを言って早坂を突き飛ばして乃木にぶつけたの!」 「ん?!」 「でもさ、すぐに『そんな乃木を騙すようなゲームはしたくない』って早坂に断られた。『自力で頑張るから』って早坂が言うからゲームの話はなくなったんだよ」 「えっ……」  告白ゲームじゃなかった。  ということは、早坂は本心で俺に近づいてきていたのか……?  一緒に帰ろうって声をかけてきたのも、ゲームの攻略のためじゃなく、本当に俺と一緒に帰りたかったから? 「可愛い」 「乃木のこともっと知りたい」 「好きだ」  あのとき繋いだ手も、キスも、告白だって全部ゲームのためじゃなかった……? 「嘘だろ……?!」  早坂は真摯に向き合ってくれたのに、それに対して俺は何をした?  スポドリ買ってこいと早坂をパシるところから始まって、毎日迎えに来いだの、メール寄越せだの、何を偉そうに……。  早坂は相当辛かったんじゃないのか?!  それなのに、俺に「好きだ」って告白してくれた。  その告白すら、俺はきっぱり拒絶した。あのとき早坂はどう思ったのだろう。 「嘘だろ……」  早坂に悪いことをした。謝っても許されないくらい、酷いことを。  告白ゲームは初めからなかった。  それなのに今日、早坂は俺を迎えに来なかった。そのことが、早坂の答えに違いない。  早坂は俺のことをついに嫌いになったんだ。  嫌われて当然だ。あんなに早坂に意地悪ばかりして、いくら優しい早坂でも限界ってものがある。 「波田野、俺どうしよう……。早坂に酷いことをした。だって、だって全部告白ゲームのためにやってるんだって思ってたから……あんないい奴を俺は振り回して傷つけて……」  波田野に言っても意味のないことなのに、どうしても懺悔したかった。 「俺、早坂に嫌われた……本当は、本当は俺、早坂のこと……」  自分がやってしまったことも、時間も戻らない。  つい昨日まで、早坂は俺のそばにいてくれたのに。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

287人が本棚に入れています
本棚に追加