3.放課後デート

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3.放課後デート

 放課後、いつものとおりに早坂とふたりで下校していたときだった。 「あ、あの乃木。ちょっとだけ遠回りしていかない?」  せっかく駅まで着いたのに、早坂はあとひと駅だけ歩こうと提案してきた。  俺の通う高校の最寄りの駅は、地上にあった駅を地下に移動する、という再開発が進んでいるところだ。  電車が地下に潜ったぶん、空き地になった元線路があった場所は、隣の駅まで緑道が作られて、いくつかの新しいオシャレな店がオープンしている。 「頼む。少しだけ」  早坂とひと駅だけのデートをする……。それって、すごく楽しそうだ。  違う違う! 楽しんでどうする?!  早坂が嫌がることをしなくっちゃ。 「いいよ。ただし条件がある」 「出た。乃木はいつも条件をつけてくるんだな」 「手を繋いでよ」  どうだ、早坂! 男と公衆の面前で手を繋ぐなんて恥ずかしくて絶対に嫌だろ!  早坂は予想どおり、驚き困惑している。  いくら早坂とはいえ、これはさすがに無理だろう。  困れ困れっ!  これで告白ゲームを諦めろ!   早坂は何も言わず、俺に少し身体を寄せてきた。  早坂の左手が、俺の右手に触れる。  早坂の指は俺の反応を試すように彷徨っていたが、俺が逃げないとわかってそっと手を握ってきた。  早坂の温かい手から、優しさが伝わってくる。俺を怖がらせないように、愛おしそうに早坂の指が乃木の手の甲を這う。 「おいっ、早坂っ、冗談だって、離せよっ……!」  どうしよう、早く離してもらわないと、危険だ。  すごくドキドキする! このままじゃ早坂のことを好きになる……! 「離さない」 「はぁっ?!」  早坂は手を繋いだまま歩き出した。このシチュは絶対にダメだ。早坂は目立つから、周囲から見られて変な誤解を受ける。こんな地味な奴とイケメンが恋人同士なのかって思われる! 「早坂」 「少しだけ。隣の駅まで」  なんて奴だ。たかがゲームで勝つためだけに、男と手を繋いで街を歩くだなんて。  注目を浴びて、かなり恥ずかしいはずだ。同じ学校の奴が見ていたら、男好きとかブサイク好きとか変な噂を立てられるかもしれないのに。 「乃木の手は小さいんだな」  早坂はそう言って俺の手を確かめるように撫でた。 「可愛い」 「~~~~ッ!!」  なんてことを言うんだ!  これはきっと早坂に口説かれている。告白ゲームのために上辺だけの言葉を吐いて、俺をその気にさせようとしてるんだろ! 「乃木、もしかして照れてる?」 「照れてないっ!」 「照れてるその顔も可愛い」  あぁ! もうイケメンはそういうこと言うなって……。
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