3.放課後デート

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 店を出たら、外は少しずつ暗くなりかけていた。早坂とふたりで駅に向かって歩き出す。 「ありがとう乃木。今日はすごく楽しかった」  早坂は俺に感謝してきた。そこで俺は気がついた。  早坂に感謝される=早坂に好かれる=告白ゲームを諦めてくれない、の方程式が成り立ってしまうことに。 「俺は歩き疲れたよ」  せっかく楽しく過ごしたのに、最後にウザいひと言! これで早坂は俺のことを嫌いになるだろう。 「早坂、おぶれよ。俺もう歩きたくない」  これはさらにウザいぞ。誰がDKなんて喜んで背負って歩きたい?! そんな奴いねぇよ。  さすがの早坂も怒るに違いない。 「いいよ。乗って。鞄もちょうだい。俺が持つから」  早坂は俺の目の前でしゃがんで背中を見せてくる。ここにおぶされ、という意味なのだろう。 「はっ、早坂やめとけよ、俺、結構重いし……」 「ごめん。今日は俺に付き合ったせいで歩き疲れたよな。俺なら大丈夫。ほら、おんぶしてもらいたいんだろ?」  うわ、どうする。こいつ、なんで嫌がらないんだよ……。  でも「おぶれ」と言ったのは俺だ。今さらなかったことにはできない。 「じゃ。じゃあ……」  俺は早坂の背中にまたがり、早坂の首に腕を回した。 「もっとしっかり俺に抱きついて」  早坂が立ち上がり、俺にそんなことを言った。  もっと抱きつけって……そんな……。 「ぴったりくっついてくれたほうが、重くないから」  そ、そういうもんなのか。おぶってもらったのなんて、子供の頃以来のことで、俺は緊張して遠慮していたが、早坂の言葉に従って早坂の身体に身を寄せた。 「よし。動くぞ」  早坂はマジで俺をおぶって歩き出した。  信じられない。こんな街中で男が男をおぶっていくなんて……。  しかも俺、ちっさいけど、女ほどは軽くない。  くっつけと言われたから、早坂に抱きついてるけど、すごくドキドキする。  あったかいし、頼り甲斐あるし、普通に歩かなくていいから楽だし、最高だ。  ごめんな、早坂。本当はこんなことしたくないだろうに。  でも、告白ゲームを始めたのは早坂。半分は自業自得だ。 「乃木が俺を頼ってくれてるみたいで、すごく幸せだ」 「へぁっ?!」  急に何を言い出すかと思えば! 「乃木。駅じゃなくて家までおぶろうか?」 「やっ、やめろって! 駅も近くなったら降りるから!」  俺が恥ずかしいわ! 怪我もしてないのにおぶられてるなんて。 「わかった。じゃあ駅の少し手前までな!」  早坂は俺を大切なものかのように扱う。こんな奴が本当にそばにいてくれたらいいのにな。
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