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4.本心
「乃木って、いつの間に早坂と仲良くなったの?!」
昼休みに教室で友人の石井に突っ込まれた。
確かに異常な光景だろう。ある日突然早坂が俺ばかり構うようになったのだから。
「仲良くなんかないよ。あいつは……」
早坂は告白ゲームのために俺に近づいているだけだ。それは最初からわかっていることなのに、少しさみしく思った。
「とにかく、早坂が俺に付き纏ってくるのは今だけ! もうすぐ終わるよ」
「え? なんでわかるの? てか、どういう事情?!」
仕方がない。石井に告白ゲームの攻略対象にされていることを話してやるか。そうすれば納得するだろうから。
「石井、ちょっと来い。あまり大きな声じゃ話せないことなんだ」
人気のない教室の隅に石井を呼び、ふたりでカーテンの中に入って上半身を隠すようにする。
「あのな、石井。これにはわけがあるって俺は思ってる」
「なに? わけって?」
俺は石井にこっそり耳打ちしてやろうと、石井の耳に顔を寄せた。
そのとき、急に目の前にあったカーテンがシャッと取り払われた。
「えっ?!」
「うわっ!」
カーテンを握りしめたまま、こちらを恐い顔で見下ろしてきたのは早坂だ。
突然のことで俺も石井もびっくりしてビクッと身体が飛び跳ねる。
「こんなところでふたりきりになって、何してる」
怖っわ! 早坂はいつも穏やかな奴なのになんで?!
「な、な、なんでもない、ちょっとふざけて遊んでただけ」
まさか告白ゲームの真相を石井にバラそうとしていたとは言えず、俺は適当な言葉で誤魔化した。
「へぇ。乃木と石井は前々から仲がいいと思ってたけど、まさかそういう間柄なのか?」
「は?」
そういう間柄?!
それって、まさか恋愛の意味での恋人的な関係ってことか?!
これは使える!
石井とデキてることにすれば、早坂は俺のことを攻略できないと諦めるんじゃないのか?!
「あー、俺たち結構、いい感じだよな? 石井!」
俺は石井の肩に腕を回して『仲の良さ』をアピールする。
石井が「はぁっ?!」って顔をするから『とりあえず合わせておけよ』と俺は高圧的な笑顔で石井を封じてやった。
「早坂知らなかった? こんなことあんまり大っぴらにはできないから黙っててくれよ」
よし! これで早坂はきっと諦める。
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