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と、思ったのも束の間。
「今すぐ離れろ」
早坂は俺と石井の間に割って入ってきて、俺たちを無理矢理引き離した。
「乃木。男でもいけるなら、俺にしないか?」
「……は……はいいっ?!」
いきなり何を言い出す?! ほら、石井までびっくりして目を丸くしている。
「他の男とイチャつくな。見ていて気が狂いそうになる」
なんで?!
早坂はすっかり恋人気取りなのか?!
「俺には乃木しかいないのに」
切なそうな目でぐいぐい迫ってきたかと思うと、早坂は突然俺の身体を抱き締めてきた。
え……。
ここ学校だし、石井もめっちゃ見てるのに?!
「離せって!」
必死で早坂の身体を押して早坂の腕から逃れる。
「無理無理、俺っ、日本人だからっ!」
早坂は海外生活が長すぎて距離感近すぎるんじゃないのか?!
「俺も日本人だけど」
「んー……っ! 海外と違って日本はあんまそういうことしないの!」
「育ってきた国とか関係ない。向こうだってこんなこと好きな人にしかしないよ」
おい、さらっと『好きな人』とか言うな!
石井が「俺邪魔かなぁ」なんて呟いてその場から逃げようとするから、制服のシャツの裾を掴んで引き止めた。
ダメだ、石井行かないでくれ! 今ここでひとりにされたら俺はどうなる?!
マジで早坂に食われるッ!
「じゅっ、授業授業っ! 早坂それじゃまたな!」
こうなったら強引にでも話を終わらせる作戦に出るしかない。
「石井行こう!」
石井の背中を押しつつ、俺もこっそり早坂から距離をとる。
早坂はこれ以上追っては来なかった。
はぁ、びっくりしたな……。
一瞬本気で好かれているのかと思ってしまった。
そんなわけない。俺はただのゲームの攻略対象なんだから。
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