1.告白ゲーム開始

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 俺は自分の机に座り、勉強するふりをしながら、隣の三人の話についつい聞き耳を立てている。  さっきから気になって気になって仕方がない。 「早坂ってあの女子大卒の英語の佐藤に卒業したら付き合ってって言われたんだろ?!」 「あぁ、あれはびっくりした」  波田野の言葉に、俺も密かに驚いた。早坂は生徒だけじゃなく教師にまで告白されたらしい。だが、こんなかっこいい生徒がいたら手を出したくなる気持ちもわかる。 「早坂なら誰でもモノにできるんじゃね?」 「マジでそれな」  蓑島の言葉にすぐさま波田野が同意する。  そして俺もやっぱり同意だ。早坂に好かれて、早坂を振る女なんていないだろう。  本当に早坂は別次元にいるような奴だ。どうしてこんなハイスペック男がこの高校に転校してきたのだろう。高校三年生からの受け入れが他の高校は難しかったのだろうか。  俺はおもむろに席を立ち上がる。  次の授業は移動で、そろそろ周りの皆が動き出したからだ。 「おい、早坂と蓑島、ゲームをしようぜ。それぞれが次に最初にぶつかった奴を口説いて、告白する。それで告白オッケーもらえた奴が勝ちってゲーム。もちろん、一番早く付き合えた奴が勝ち!」  波田野は最悪なゲームを思いついたようだ。  いくら自分たちがモテるからって、人の気持ちを弄ぶようなゲームをするなよな。 「面白いな! やろうぜやろうぜ! じゃあ今からスタートな! 俺、誰とぶつかろっかなぁ」  蓑島はかなり乗り気だ。そしてぶつかりたい相手を物色し始めたようだ。  蓑島の考えはわかる。どうせ口説くなら自分の好みの女子がいいだろうから。 「俺は秒で口説けそうな女にする」  波田野の考えは最悪だ。まぁ、この告白ゲームに勝つためにはそのような戦略になるのかもしれない。  そんなことばかり考えながら俺が次の教室へ向かおうとしたときだった。  ドンっと、俺の背中に何かが触れた。 その何かは、正確に言えば『誰か』だ。  えっ……?  早坂?! 「あ、ごめん、乃木」  早坂はすぐにぶつかったことを謝ってきた。別にちょっとぶつかったくらい、普段だったら気にもかけない。  だが俺は、さっきの三人の話を聞いてしまったばかりだ。  今から最初にぶつかった奴を口説いて、誰が一番に告白オッケーもらえるかというゲームの話を。  まさか。  俺は男だ。男はさっきのゲームの相手としては相応しくない。ノーカンに決まっている。  ないないないっ! ありえないだろっ!  俺はその場から逃げるようにして、次の教室へと向かう他の生徒の中へと紛れていった。
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