1.告白ゲーム開始

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 SHR(ショートホームルーム)が終わったあと、俺がいつも一緒に帰るメンバーとダラダラ喋っていたところに、早坂が近づいてきた。 「なぁ、乃木。今から帰る?」 「えっ? 帰る……けど……」 「じゃあ俺と一緒に帰らない?」  教室で早坂とまともに話したことすらないのに、なんで早坂は急に声をかけてきたんだろう。  周りの奴らも早坂の奇行にびっくりしている。  みんな「早坂が話しかけてきた!」「乃木っ、一緒に帰ってやれよ」となんだか早坂の味方みたいなところが気になるが。 「い、いいけど……」  早坂と話をしてみたいな、という気持ちは四月に早坂が転校してきたときからあった。  だってすごく興味がある。どうやったらこんな完璧な人間になれるんだろうって。 「じゃあ行こう」  ハッと俺は息を呑んだ。  早坂がにっこり笑った。  早坂は物静かなタイプだからあまり笑顔を見せたことがない。そんな奴が俺だけに笑顔を向けてくるから、すごくドキドキして目が離せなくなった。  かっこいい。マジでかっこいい。国宝級の顔面のくせにそんなに優しく微笑みかけてこないで欲しい。  結局、早坂とふたりで帰ることになり、いつメンとは教室で別れることになった。 「あれ? 早坂、今日は俺たちと帰らないの?」  波田野が早坂に声をかけてきた。波田野の隣には蓑島もいる。 「うん。今日から俺、乃木と帰ることにしたから」 「あー、なる。そっかそっか」  波田野はなんだか含み笑いを浮かべている。 「俺も頑張るわ。早坂もせいぜい頑張れよ」 「あぁ」  早坂は波田野の言葉に静かに頷いてみせた。 「男かぁ……。これは面白いことになりそうだな。早坂にはこのくらいのハンデがあったほうがいいもんな」    蓑島が乃木を見てニタニタ笑っているように見えた。  ハンデ……。いったいなんの勝負でのハンディキャップなのだろう。 「蓑島。その話は無しだ」 「あ、そっか。ごめん」 「じゃあな、早坂!」 「あぁ、またな」  波田野と蓑島は早坂に挨拶をして通り過ぎていった。  三人のやり取りを聞いていて俺の中にある考えが浮かんでくる。  まさかとは思うが、早坂はあの波田野が考えたゲームを受けたのだろうか。  早坂がそんなくだらないゲームに参加するなんて思えない。でも、早坂は急に俺に声をかけて誘ってきた。それこそ不自然だ。  早坂は、俺を好きにさせて告白をして、ゲームに勝とうと考えてんのかな。  そのゲームが終わったら俺はどうなるんだろう。あの告白は実はゲームでしたとネタばらしされて、あっさり捨てられるのだろうか。  早坂は酷い。俺の気持ちを弄ぶような真似をして……。  いくら平凡な俺でも、ゲームの攻略対象にするなんて酷すぎるだろ。   「乃木。どうしたの? 荷物が重い? 俺が持とうか?」  そう言って早坂が俺の肩にかかっていたスクールカバンを奪い取ろうとするから、慌てて「いいっ、大丈夫っ!」と拒否した。 「乃木は南田駅だったよな? 俺、その駅のひとつ先の駅に住んでるから、電車の方向も一緒だな」 「なんで俺の降りる駅知ってんの?!」  びっくりして思わず声が出た。早坂が転校してきてまだ三ヶ月しか経っていない。それなのにどうして俺のことについて知っているのだろう。 「波田野から聞いた」 「あ、そうなんだ……」  波田野が知っていることにもちょっと驚きだが、まぁ、波田野は電車で俺を見かけたことがあるのかもしれない。
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