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それにしても早坂はすごい。俺と早坂が並んで廊下を歩いていると、それだけでみんなから注目されているのがわかる。
しかも早坂が俺をエスコートするようにして隣を歩くから、ものすごい優越感だ。「乃木くんいいなぁ」と女子生徒からの羨望の眼差しを感じる。
そうだよな。早坂と一緒にいられるだけでもすごいことだよな。
でもこれは、俺が告白ゲームの攻略対象にされているだけだ。
これからきっと早坂は、あの手この手で俺を好きにさせようとしてきて、いざ俺が早坂のことを好きになって告白を受けようものならゲーム終了。そこで早坂との関係は終わりだ。
早坂なんか絶対に好きにならねぇよ。
残念だったな、早坂は。攻略対象の俺が、ゲームの趣旨を聞いて知ってしまっているだけに俺が早坂に騙されることはない。早坂がどう頑張っても勝ち目はないだろう。
このまま攻略対象としてやられっぱなしは嫌だ。何か仕返ししてやりたい。
騙して悪かったと早坂を謝らせて、こんなくだらないゲームをやめにしてもらいたい。
そのためには——。
ぼんやり考え事をしていたら、気がついたら目の前が階段で、俺は階段の一番高い場所で思わずつんのめった。
「乃木っ、危ないっ!」
咄嗟に俺の身体を守る、早坂の腕。
早坂は細身なのかと思っていたのに、意外にも腕の力が強くてびっくりした。
「大丈夫か?」
「うん……」
「よかった。乃木の隣にいられて」
早坂はほっとした顔をして「ぼんやりし過ぎだよ、何を考えてたんだ?」と訊いてきた。
何を考えていただなんて言えるわけがない。俺は早坂への仕返しを考えていたんだから。
「もしかして、俺のこと?」
「へっ?!」
なんでバレてる?! でもまさか仕返しを企んでるとまではバレていないはず。
「なんだよそんな顔して。乃木は可愛いな」
「うるさいっ!」
このクソイケメンが!
簡単に可愛いとか言うなよ!
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