2.面倒くさい奴になる

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2.面倒くさい奴になる

 帰り道、早坂は俺にガンガン話しかけてくる。  意外だ。意外過ぎる。もっと静かなタイプの男だと思ってたのに。 「乃木は休みの日は何してるの?」 「俺? 俺はインドアだから家で動画とか漫画とか見てることが多いけど……」 「いいなぁ。休みの日に乃木とゆっくり家で過ごしてみたいな」  引きこもりの何がいいんだか。無理して俺に話を合わせて一日でも早く好かれようとしているのだろう。  そこからどんな動画を観てるのか、どんな漫画が好きなんだと早坂の質問オンパレードだ。早坂からしたらこんな話、楽しいのかな。 「乃木の好きな食べ物って、何?」 「え? うーんと、ポッキーかな」 「一緒だ! 俺も好き!」  なんだなんだ?! 急に早坂が嬉しそうに目をキラキラ輝かせてきた。 「へぇ。は、早坂も好きなんだ」 「うん。俺は大好き。乃木も? 乃木も好き?」  なんだこれ、好きとか大好きとか、ポッキーの話だよな?!   これは別に告白されたわけじゃない。 「俺はポッキーが好きだよ」  誤解のないよう、はっきりと答える。さっきの言葉じりを取られて告白オッケーされたと勘違いされたくないから。 「うん。わかった。またひとつ乃木のことがわかるようになった。他にも聞いていいか?」 「い、いいけど……」  興味もないくせに早坂は、俺のことばかり訊いてくる。  まずは攻略対象を知ることから始めているのだろうか。  参った。どうしたら早坂は告白ゲームをやめてくれるのだろう。  そのとき、駅の改札前でケンカをしているカップルを見かけた。 「お前の我儘には付き合ってらんねぇんだよ! 一緒になんていられるか!」 「何よ! あんたこそ思いやりなんてないじゃない!」  ふたりはお互いを罵り合っている。  カップルの修羅場を見て思いついた。  そうだ。  早坂が嫌がることをすればいいんだ。  早坂がギブアップするまで我儘を言ったらきっと諦めてくれるはず!  だってただのゲームなんだから、嫌な思いをしてまで俺に付き纏うことなどするわけがない。
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