雨よ、私を染めて

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 また朝がやって来た。  顔を洗って、服を着替えて、台所から菓子パンを二つ取って家を出て、歩きながら菓子パンを一つ食べる。学校に着いてからではきっと食べられないからだ。  直接学校には向かわず、スマホで時間を確認しながら人通りの少ない道を選んで遠回りする。そして、朝のホームルームが始まる直前に教室に入り、自分の席に着く。周囲から向けられる視線とコソコソと話す声。  これから、私の一日が始まる。  机の中を確認すると、いつも通り虫の死骸が入れられていたので、一時間目の授業が始まる前に掃除をする。今日はまだ運が良い。以前、小動物の死体を入れられていた時は机の中から酷い臭いがして大変だった。  授業が終わり、休み時間になると私の机の周りに数人のクラスメイトが集まり、嘲笑しながら私を罵倒したり、髪を引っ張ったり頭を叩いたりして遊び始める。それを遠巻きに見ているクラスメイト達も、ニヤニヤと気持ちの悪い表情を浮かべている。  休み時間の度に私の周りには人が集まって来る。何度かトイレに逃げ込んだりもしたが、トイレの個室に隠れると上から水をかけられたり、教室に帰って来ると教科書や筆記用具が無くなる為、私は大人しく席に座って我慢することを選んだ。そちらの方が被害は少ないと思ったからだ。 今日もいつも通り席に座っていると、頭から水をかけられた。  ちゃんと掃除しときなよと嘲笑する声と他のクラスメイト達の笑い声。  なんだ、席に座っていても駄目なのか。  助けてくれる人なんて誰も居ない。私を助ければ、次は自分が標的になるかも知れないからだ。担任の教師も見て見ぬフリをする。自分のクラスでいじめが行われているなんて信じたくないんだろう。
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