0人が本棚に入れています
本棚に追加
パペティア
「ったっく! どうなっているのよ!」
ダン! と拳を叩きつけた机は、周囲に響き渡るほどの音を立てた。
「お、落ち着きましょ、奏先輩」
「こぉれが、落ち着いていられるか!」
もう一度、今度は後輩を睨みつけながら机に拳を落とす。
「警、聞き込み行くよ!」
「は、はい!」
奏は警の返事を待たずに上着をつかみ早足で横切る。
「パペティア……ふざけた通り名の通り、本当にふざけたヤツ!」
事の始まりは、一ヶ月前。
一件の殺人事件が起きた。
現場は荒された形跡もなく、ガイシゃは首を吊り宙に浮いていたため一見、自殺かと思われた。
だが、犯行はあまりにもずさんで、すぐに殺人と判明。犯人逮捕も時間の問題だと言われた。
そうして、本当に犯人は逮捕された。だが、始まりは、ここからだった。
「パペティアの指示に従っただけ。だって、俺は操り人形だから。現場には俺の作品を見ていた、俺の分身がいただろう?」
この一言で、黒幕が『パペティア』と呼ばれ、現場にあったパンダのパペットが犯人の物として注目される。
「パペティアについて? パペティアはパペティアだよ。操り人形師。それ以下でもそれ以上でもない。俺らは、かわいいかわいいパペットさ」
黒幕とはインターネットで知り合ったと言い、パペティアということ以外の情報は皆無。それよりも、恐ろしい情報が犯人から言い渡されていた。
『俺ら』
そう、複数人、複十数人による連続殺人予告。
あくる日から次々に同様の事件が、県を無関係にして発生してきた。被害者は首吊りを装った他殺、そして、現場に残るパペット。
犯人が逮捕されるも、皆、同様にパペティアの指示に従っただけと言う。
「それでも、犯罪は犯罪だ!」
犯人に突きつける言葉も同じであれば、
「操り人形には、難しい言葉だね」
と、一様に笑う。
実に、異常だと言えるだろう。
「奏先輩! 待って下さい!」
「パペティアが待ってくれるならね!」
「おお! 勝田ペア、名前の通りの活躍を待っているからな!」
奏と警は、こうして一ヶ月各地を走り回っている。
「自らの手を汚さないヤツが、一番性根が腐ってる!」
奏の正義の炎が燃える。
「警、今日こそ絶対に尻尾を捕まえるわよ!」
最初のコメントを投稿しよう!