パペティア

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パペティア

「ったっく! どうなっているのよ!」  ダン! と拳を叩きつけた机は、周囲に響き渡るほどの音を立てた。 「お、落ち着きましょ、(カナデ)先輩」 「こぉれが、落ち着いていられるか!」  もう一度、今度は後輩を睨みつけながら机に拳を落とす。 「(ケイ)、聞き込み行くよ!」 「は、はい!」  奏は警の返事を待たずに上着をつかみ早足で横切る。 「パペティア……ふざけた通り名の通り、本当にふざけたヤツ!」  事の始まりは、一ヶ月前。  一件の殺人事件が起きた。  現場は荒された形跡もなく、ガイシゃは首を吊り宙に浮いていたため一見、自殺かと思われた。  だが、犯行はあまりにもずさんで、すぐに殺人と判明。犯人逮捕も時間の問題だと言われた。  そうして、本当に犯人は逮捕された。だが、始まりは、ここからだった。 「パペティアの指示に従っただけ。だって、俺は操り人形だから。現場には俺の作品を見ていた、俺の分身がいただろう?」  この一言で、黒幕が『パペティア』と呼ばれ、現場にあったパンダのパペットが犯人の物として注目される。 「パペティアについて? パペティアはパペティアだよ。操り人形師。それ以下でもそれ以上でもない。俺()は、かわいいかわいいパペットさ」  黒幕とはインターネットで知り合ったと言い、パペティアということ以外の情報は皆無。それよりも、恐ろしい情報が犯人から言い渡されていた。 『俺()』  そう、複数人、複十数人による連続殺人予告。  あくる日から次々に同様の事件が、県を無関係にして発生してきた。被害者は首吊りを装った他殺、そして、現場に残るパペット。  犯人が逮捕されるも、皆、同様にパペティアの指示に従っただけと言う。 「それでも、犯罪は犯罪だ!」  犯人に突きつける言葉も同じであれば、 「操り人形には、難しい言葉だね」  と、一様に笑う。  実に、異常だと言えるだろう。 「奏先輩! 待って下さい!」 「パペティアが待ってくれるならね!」 「おお! 勝田ペア、名前の通りの活躍を待っているからな!」  奏と警は、こうして一ヶ月各地を走り回っている。 「自らの手を汚さないヤツが、一番性根が腐ってる!」  奏の正義の炎が燃える。 「警、今日こそ絶対に尻尾を捕まえるわよ!」
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