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彼女は、人里で産まれました。発展していない割に、人口が多いその人里で、彼女は育ちました。
──7歳を迎えるまでは、平穏な日々でした。
彼女が7歳を迎えた次の日は、母親の誕生日でした。彼女は、母親の大好きなお花を探しに行きました。その時に、悲劇が起きたのです。
彼女は吸血鬼になってしまいました。
人里には雪が降り出し、夏になっても、秋になっても、止むことはありません。吸血鬼になったと知られた彼女は、人々から貶され、肉親からは虐待を受けました。
彼女は切に願う。
「私、何か悪いことしましたか……?ただ、お母様に喜んで欲しかっただけなんです……昔は、愛されてた、気がします。愛する、事が何か、分からなくなりました。」
「できることなら、もう一度愛して」
彼女はついに、家を追い出されました。人里諸共、追い出されました。一人、雪の中を彷徨いそして……。
遠く離れた別の場所で『仲間』を見つけました。
行方不明になってしまった両親を探している子。
瞳と髪の色で厄災を招く子だと言われ、生まれてすぐに捨てられた子。
人間じゃないことで責め立てられ、主に拾われた子。そして、その子に造られた子。
愛されること……愛そのものを知らない、忘れてしまった子達で集った。
彼女はとても幸せだった。
でも、吸血鬼である彼女を殺しに来た人間たちに、皆殺されてしまいました。
彼女は全てを失いました。
頭の中で、狂ったように考えます。
このままじゃお父様やお母様の時みたいに全部忘れてしまうかもしれないそんなのは嫌だだってみんなは私の唯一の分かり合える人達でだから忘れてしまったら私はどうなるどうするどうなればいい?
なんで私だけ生きてるの?
そばにいて。ひとりにしないでよ。
彼女は皆の姿を模倣しました。
ある子が持っていた炎の剣を腰に納め、ある子が羽織っていたローブを纏い、ある子の能力を取り込み、そして。
『彼女』が出来上がりましたとさ。
死にたい思いは消えません。何故自分だけ生きているのかその疑問も消えません。ただ彼女は前を向きます。
仲間を殺した人間を殺すためだけに。
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