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「俺の連絡先知ってるだろ。空いてる日、連絡して」 「あれは一時的な連絡先だったから削除した」 「ええ?」  にべもない返事に変な声をあげてしまった。 「……じゃあ真帆の連絡先教えてよ。じゃなきゃ花言葉百個言って」 「脅してる風だけど、意味わかんねえ」  大仰にため息をつき、待ってろ、と扉の中に消える。ほどなくスマホを持って出てきた。無事に連絡先を交換し、真帆はじゃあ、と即座に背を向ける。素直なのかそうじゃないのか、どっちなんだと突っ込みたくなるところがかわいい。真帆とはおそらく同い年ぐらいだろうと園田は思っているが、つい年下のように構いたくなるゆえんはこの辺りだ。  閉まりかけた扉がふたたび開き、真帆が顔を出した。 「言っとくけど平日だぞ」  優しいやつ。そんなの織り込み済みだ。 「真帆に合わせるよ。水曜夜がいいかな」 「……再来週」  ぼそりと真帆が言う。連絡をする必要もなくなった。  目の前ですげなく扉は閉められた。  ほどよい距離がまだわからない。落ち込みの極みという面倒くさい状態の園田をわざわざ連れ帰ってくれたので、結構近づいたと思ったのだが、壁ほどではない何かがある。わがままを言いすぎたか。寝不足のせいで不機嫌だった、という可能性も否めない。  とにかく約束は取り付けたのでよしとした。  昨夜の後悔がサブリミナルみたいにまたちらついた。すべて洗って、まっさらにしたい。  空は晴れ渡っている。  帰ったらまず、ベッドのシーツを洗おう。
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