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ふいに事実が放り込まれた。じわりと痛みが広がり、同時に背負っていた荷が降りたような脱力を感じた。いつか終わることがわかっていても、本当に失くせば心に穴は開くし、傷んだ場所を癒すにはじっと待つしかない。週明けに彼と顔を合わせるときまでに、せめて傷が乾く程度にはなっていてほしい。傷つけた非礼を詫びなければ。
園田は起き上がり、顔を洗った。昨日着ていたスーツに着替え、借りた着替えと布団を畳んで隅に置き、キッチンに放置されたビール缶をすすぐ。
棚の食器に目が留まった。カラフルだったり、シンプルだったり雰囲気がまちまちだ。陶芸のことはまったくわからないが、作風を模索したりというのもあるのかもしれない。
その陶芸家のことを好きだったと真帆が話したときに、園田ははじめて会った日、どことなく嬉しそうだった真帆を思い浮かべていた。真帆は彼のことをまだ忘れられないのかもしれない。だからこれほど園田に親身になってくれた、というのは考えすぎだろうか。
最後にクッションを叩いて並べ直し、最低限整えた部屋を見渡した。
洒落た雰囲気だが決まりすぎずどこか温かみがあり、居心地がいい。家具もこだわりを感じるものと手頃なものが混在して、不思議と調和していた。壁際の本棚にはデザインや植物、インテリア、美術、様々なジャンルの本がある。女性向けの雑誌もあった。仕事の参考にしているのだろうか。それに幾つかの知ったタイトルの小説。
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