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 彼はあっさりと持ち替え、レジに戻った。高さを合わせてハサミで躊躇なく茎を切る。それまでほとんど変化がなかった目元が和んで見える。嬉しいのかな。そんなに花が好きなのか。生命に囲まれて生きている人。少し大げさか。  しかし花が包まれ、一輪挿しが緩衝材で巻かれるのを見るうちに、もしかしてあの花瓶、すごく高いんじゃないかという気がしてきた。直感で決めてしまったので値段を見なかった。ちゃんとした焼き物のようだし、売れてラッキーという意味の嬉しいだったのか?  勧めないとはっきり言われたので向こうに非はない。やっぱりやめるとはもう言いづらい。  諦めた心境で会計を待ったが、目をみはるほどの金額ではなく安堵した。 「これ、なんていうの?」 「花の名前?」 「花言葉」  試したいわけではなく、思い浮かんだので聞いてみた。 「親愛、友情、感謝……無邪気」  彼は即座に答えた。はは、と軽い笑いがこみ上げた。 「じゃ、また」 「ありがとうございました」  見送られるときになり、ようやくまともに顔を見た。クールな眼差しの下、形の良い唇は軽く結ばれるのみで、無愛想な印象は変わらない。でもなかなかいい男だなと思い、園田は店を出た。  半年ほど前、付き合って四年の相手に別れを告げられた。年上ですらりとしていて、たまに少年みたいな表情をした。どことなく、見ているだけで終わってしまった初恋の人を思わせた。多分それが猛進ぶりに拍車をかけていた。気がついたときにはもう、向こうに相手がいた。
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