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待合室には、玻璃と同じ資料を持つ姿が数人あった。空いている席を探して彼も座り、資料に目を通す。内容は安全面や今日の体調確認、個人情報やここで受けた薬品について、情報漏洩をしないようになどが書かれていた。
「六切さん、六切玻璃さ~ん」
読み終えて暇を持て余していると、少し眠くなってくる。目蓋が落ちそうになった頃に呼ばれ、玻璃は慌てて立ち上がった。
案内された病室は四人での相部屋。軽くだが同室の参加者にあいさつをし、ベッドに腰掛ける。玻璃が過ごす事となるのは、窓に近くてなんとなく開放感を覚えた。
「六切さん、今よろしいですか? 失礼しますね」
男の声が聞こえた。少し太く、ギヴァーではない。
カーテンを開けたのは、白衣を着た中年男性。そういえば、ギヴァーから院長は別に居ると聞いていた。自己紹介を聞けば、やはり院長。名前は山崎竜真と名乗った。
玻璃は、彼がカーテンの中に入った時、もう一人居るのに気付く。竜真の後ろに続いたのは、まだ十になって間もなく見える少女。緑と黄色が混ざった、ひまわりのような不思議な瞳をしている。
「こちらが、本日分のお薬です。夕食前にはお飲みくださいね。他の時間は自由ですので」
「ど、どうも。あ……後ろの」
「あぁ、これですか。娘のようなもので、お気になさらず」
それは少し無理な要求だ。何故なら、少女は特徴的な瞳で、じっと見つめてくるから。現実味のない瞳は美しいが、まるで品定めしているような視線は、あまりいい気はしない。
「何か些細な事でも、スタッフにおっしゃってくださいね」
「あ、ども」
カーテンが閉まると、白い世界の向こう側で二人分の足音が去って行くのが聞こえた。同室の被験者とは、もう同じ挨拶を終えたのだろう。
受け取ったのは粉薬。包んでいた紙を開けると、いかにも苦そうな灰色が顔を見せた。薬は苦手だ。しかしこれをするだけで、役目は終わる。
玻璃は悪あがきに息を止め、一気に口へ含むと水で流し込む。ぷはっと息を吐き、僅かに残るなんとも気持ち悪い苦味に顔をしかめた。
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