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「ああ、私だ、社長はいる?」
相手は塚本金融である。
「ああ、所長、まだ4時過ぎだよ。よっぽどいいネタだろうね」
塚本金融の塚本は眠そうな声だった。
「ああ、社長のとこは人使い荒いからこんな明け方まで仕事しなきゃならない。依頼の佐々木を見つけた。これから川崎駅に向かう。若い衆にかっ飛ばして来るよう伝えて」
「了解、所長、帰りに寄って、すぐに頼みたいことがあるんだ」
電話を切った。日ノ出町から信号無視でどんなにかっと飛ばしても、それでも20分は掛かる。浮浪者の懐にいくらあったのかは分からないが額によっては合羽橋での待ち合わせに来ない可能性もある。佐々木は切符を購入した。ジャラ銭であることから近場への移動。徳田は入場券を購入。
「見送り」
駅員が頷いた。佐々木は東海道線のホームに降りた。ベンチに座る位置からして上り方向。10分で始発が来る。徳田は一旦改札を出て電話ボックスに行く。
「社長、JR川崎駅の東海道線上り3両目。話し掛けて時間潰しておくから」
「分かった、ポケベルで若いもんに知らせる。所長踏ん張ってよ」
「高いよ」
また入場券で入った。パンチパーマの駅員が切符を切った。佐々木が座るベンチの裏に回った。浮浪者から巻き上げた金を数えている。千円札ばかりで5万はあるだろう。空き缶を売ってコツコツ溜めた金を暴力で奪い取った人でなしを徳田は許さない。上り始発が入って来た。階段を見るが金融屋の若い衆の姿はない。佐々木が立ち上がろうとする。
「佐々木さん」
振り返った。
「あんたは映画館の」
「実は急用が出来て、合羽橋まで付き合えない。嘘吐きは嫌だからここで10万渡して置こう」
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