都橋探偵事情『箱庭』

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「どこで見つけたんですこいつ?」  中西が布川に訊いた。 「氷川丸に隠れていやがった、警備の通報で水上警察が取り押さえた」 「こいつ何で毛布なんです」   高崎は毛布に包まっている。 「ずぶ濡れで震えていた。もう逃げられる状況じゃなかったらしい、寒くて動けなかったと訊いた」  中西が高崎の前に座った。 「飛び込んだのか海に?」 「やっぱり寒いなあ」  高崎がにやけた。 「飛び込んでどこに行くつもりだった」 「反対側に人工島の灯が見えたから泳いだ。しばらくしたらライトに照らされていた。それで引き返した」 「お前が見たのは車のヘッドライトだ。おい訊いたか小野田、俺の読み通りだろ。俺はもう少し近くまで来ていると思ったんだ。それでライト当てて見えたら飛び込んで沈めるつもりだった」 「さすが中西班長、読み凄い。おい高崎、てめえ引き返しやがってばか野郎、西さんの気持ちが分からねえのか」  小野田が高崎の頭を叩いた。 「痛えな、何すんだばか野郎、弁護士呼べよ」  小野田が首固めをした。 「吉野君、止めなさい」  布川が命令する。吉野が小野田の脇に手を入れ引き離す。 「おい高崎、今度は死刑まであるぞ、女を殺したんだ」 「あの女が欲しいって言うから上げただけだよ。勝手に打って勝手に死んで、どこが殺しなんだ」  ブツは見つかっていない。一緒にいたポン中の女が宿屋でショック死をした。
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