都橋探偵事情『箱庭』

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「実は俺も悩んでいるんだ。女に飽きて来たのかもしれねえなあ。おっ、小野田、お前のが触れてるよばか野郎、お前とだけはやだよ」 「俺だって西さんとなんかやですよ」  二人の会話を訊いていて吉野がパンツを穿いた。 「おい、お前等、ここで何してる」  瑞穂ふ頭の半分は自衛隊が管理している。警邏の隊員が三人にライトを当てた。 「俺達は伊勢佐木中央署のもんだ、海を渡り逃げてくるホシを待ち構えている」 「身分証明書は?」  吉野がボンネットに畳んだスーツから取り出して自衛官に提示した。 「お疲れ様です。協力出来ることはありますか?」  若い自衛官は敬礼して協力を申し出た。 「悪いが署に電話を入れてここで張っていることを伝えて欲しい」 「分かりました」   自衛官は敬礼して戻って行った。 「若い子だな、まだ16~7歳だな、可愛い顔してたな」 「西さん、もしかして感じちゃったんじゃないですか?」 「ばか野郎、煽てんじゃねえよ」  すぐに自衛官が戻って来た。 「報告します。犯人を逮捕したのですぐに戻るよう布川さんからです」 「あっそう、ありがとう」  中西が『寒い、寒い』と言って服を着始めた。小野田は口笛を吹いている。曲は『ペッパー警部』である。 「ペッパー警部っよってか。ほら吉野行くぞ、いつまで着替えてんだ」  車が動き出すまで自衛官が敬礼をしていた。  二箱買ったラークも残り10本、時計を見ると03:50分。一人二人とポルノ劇場から出てくる。純粋なポルノ映画ファンだけではない。一夜の宿代わりに利用する者もいる。佐々木が出て来た。くしゃみを連続している。
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