普通

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普通

 外はもう本降りだった。 ザアザアと音を立てて降っている。  ひいばあちゃんは仏壇の前に座っていた。 薄暗くて少し肌寒い中、正座をして、ひいじいちゃんとじいちゃんの写真を眺めていた。  少し離れた所で僕はその様子をみていたが、ひいばあちゃんはそれに気付き、ちょいちょいと手でこちらに来いと合図する。  僕が近くに座ると、ひいばあちゃんはお話を始めた。 「ひいじいちゃんと出会ったのは雨の日でねぇ、じいちゃんが生まれたのも雨の日だったのよ」 「どっちも雨の日だったんだ!」 「そうそう、だからかしらねぇ、ひいばあちゃんが普通になるのは、嬉しいことがたくさんあった雨の日なの」 「普通?」 「いつもは、普通じゃないだろう?」  僕の知ってるひいばあちゃんのいつもは、普通じゃなかったらしい。 ひいばあちゃんはため息をついた。
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