ep1 

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ep1 

セリスとイアンが晴れて幼馴染みから恋人同士となってから暫く経ったある日。 「イアン、体どう?」 「あぁ…もう問題ない…。いい加減体動かさないと鈍りそうだ…。」 「そっか、良かった!」 イアンは、怪我も治り、完全に回復し動けるようになり、そろそろ書類仕事以外の仕事がしたいと思っていた。 そんな時、セリスとイアンに護衛の仕事が入ってきた。 護衛対象は国王であるアリサンドで、隣国であるメルトビアまで護衛せよ、とのお達しだ。 メルトビアとエルヴェリアは協定を組んでおり、近頃怪しい動きを見せている他国ついて合同会議をするらしい。 その会議にアリサンドも参加し、護衛をつけることになった。それが二人というわけである。 現在、二人は厩舎から馬を出し、出発の準備を済ませた後、城門前で話している。 「今日は久々の護衛の仕事か。」 「ここのところずっと書類仕事だったから、体動かすには丁度良いね!」 「そうだな。」 「でも…」 「?」 「メルトビアの王子、私少し苦手なんだよね…」 「あぁ…アイツか。」 セリスの言葉に、イアンは前回メルトビアを訪れた時の事を思い出す。 それは、メルトビアの王子がセリスに一目惚れし、猛アタックをした日の事だ。 わざわざセリスを指名するのも、これが理由だろうとイアンは眉根を寄せる。 前回は、その場を切り抜けたが、次会えばどうなるか分からない。無論、イアンは今回も渡すつもりはないのだが。 「もし会っても無視しろよ?それか適当にあしらえ。お前もう俺の恋人なんだから。」 「(恋人!?)そ、それは出来るわけないよ、相手は王子なんだから。」 セリスはイアンの恋人って言葉に内心照れながら言う。 「それもそうか…。まぁ、何かあったら直ぐに言えよ。」 「うん」 目を細めて愛おしそうな表情でイアンは、セリスの頭にポンと手を置いた。そして、穏やかな声で言う。 恋人扱いさせる事に慣れていないセリスは、少し俯いて頬を赤く染めている。 「おーい、お二人さん。いちゃつくな-!」 「私達も居るからね!」 (い、いちゃ!?) (なっ!いちゃついてない!) 二人の間には甘い空気が流れている。そこへ、後から来たガレンとエミリアが、揶揄(から)かうように声をかけた。 ガレンはニヤニヤとしながら二人を見ている。 ガレンの言葉に動揺し顔を赤くするセリス。イアンは否定しているが顔が赤く説得力がない。 「そんな顔で言われてもなー。」 「うるせぇ!つか、お前らも今回の護衛か?」 「おー。に、してもやっと付き合うようになったのか?」 「……まぁな。」 イアンは、照れくさそうに顔を背けながら言う。 「いやー、良かった!二人がくっつくのを待ってたんだぜ!」 「ね?本当に!皆、待ってたよ!」 「待って、皆って?」 セリスは小首を傾げながら聞き返す。 「城の奴らだよ。早よくっつけって思ってたはず。」 二人の仲の良さは城内でも有名であった。城の人間は、イアンとセリスの二人がくっつく事を望んでいた。 しかし、中々進展しない二人にやきもきしていた。そんな中でやっと恋人になったのだ。きっと周囲に城の人間がいたら激しく頷いているだろう。 「「!?」」 自分達がそんな風に思われていたとは思わず、セリスとイアンは驚き目を丸くした後、 「嘘だろ…」 「本当に皆、そう思ってたの?」 「まぁ、だいたいの奴はな~」 ((恥ずかしすぎる)) セリスは恥ずかしさで赤くなった顔を両手で、隠しイアンは片手で顔を覆い天を向いた。 そんな会話をしていると、他にも同行する数人の騎士達が、準備を済ませ城から出てきた。 「あはは…照れてるところ悪いけど、そろそろ出発みたいだよ。」 グレースの言葉にイアンとセリスは城門を見ると、既に出発の準備は整い、四人を待っている状態だった。 「さて、俺たちも行くか」 「うん。」 「そうだな」 「そうだね」 イアンの一言にセリス、ガレン、グレースは返事をすると、四人もメルトビアに向かうべく自分達の馬に跨った。 四人は気持ちを切り替え、気を引き締める。表情も真剣そのものだ。 馬車の横側には騎士達がついているため、魔法士である四人は、馬車の後ろにつくことになる。 手前にイアンとセリス、その後ろにガレンとエミリアといった配置だ。四人が配置につくと馬車は、ゆっくりと動き出した。 暫くの間、街道の石畳の道を進む。国王を狙う輩はどこから来るか分からないため、街道だからと気を抜くことはしない。そのまま街や村を通り過ぎると、山林の中へと入る。山林には、木々の隙間から木漏れ日が差している。 「今のところ順調だなー。」 「だからって油断するなよ」 沈黙を破り、何気なくガレンが緊張感のない声で呟いた。それを聞いたイアンが、前を向いたままガレンに釘を差す。 「わーてるよ。」 「お前に何があろうが構わないが…。お前のせいで、もしセリスに何かあってみろ。どうなるか分かるよな?」 軽く返事をしたガレンに、今度は声を低くしギロリと射るような目で、もう一度釘を指す。"釘を指す"と言うよりは、むしろ恫喝に近い。 「っ……(怖ぇー)」 イアンの眼光の鋭さに、ガレンの背中に冷や汗が流れる。それほどまでにイアンの眼光は凄まじいものだった。 「まぁまぁイアン。落ち着いて。気持ちは嬉しいけど…やりすぎ。」 「そうだよー。ガレンだって悪気があったわけじゃないんだから。」 セリスとグレースがイアンを宥める。そのお陰か、イアンは普段の状態に戻った。 ガレンは、ほっと胸を撫で下ろした。
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