女の幽霊

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「暁治君、今何処にいるの?塾の近く?」 「いや、家。帰って来たばっか。でも、戻らないとな。」 暁治はそう言って溜息を吐いた。塾に逆戻りするのは面倒だったが、財布を取りに行かなくてはいけないだろう。すると、美麗がこんな事を言ってくれた。 「あのね。私、暁治君の家の近くに行く用事があるから…。良かったら、お財布を届けに行ってあげようか?」 「本当に?!」 彼は思わず、そう言って食いついてしまった。美麗はちょっと童顔で可愛いタイプの顔立ちをしていた。その上、スタイルも良かったので、暁治はすぐに財布を持ってきてくれたお礼にと言って、家の中に引っ張り込めば、良い雰囲気になれるのではと期待してしまった。 「やっぱり、急に来られても迷惑かな?」 「いや、全然迷惑なんかじゃない。凄い助かるよ!」 そう暁治が慌てて否定すると、彼女はクスクスと笑って、「じゃあ、30分後位には行けると思うから、待っていて。」と言って通話を切った。 そして、彼がスマホから顔を離して、ふと辺りを見回すと、ここ最近掃除をしなかった所為で散らかっている自分の部屋が目に入った。こんな部屋に女の子を入れたとしても、良い雰囲気になるどころか、幻滅されるのが落ちだと思った暁治は慌てて片付け始めた。
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