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その晩、暁治はおかしな夢を見た。
「ねえ。私の何処がいけないの?稼いだお金は沢山あげているし、有名な先生に習って料理の腕も上達したし、もっと痩せろって言うからダイエットだってしているし…。何で滅多に帰ってくれなくなっちゃったの?どうして他の女と浮気をするの?」
彼の目の前にいたのは痩せぎすに長い黒髪の20代前半位の女だった。彼女は明らかに情緒不安定になりながら、彼の方を泣きそうな顔で見て来た。
(誰だ?俺はこんな女は知らないぞ。何で知らない女の人にこんな風に詰られなくちゃいけないんだ。)
暁治は内心そう狼狽えたが内心とは裏腹に、彼の口は勝手に「つべこべ言うなよ。鬱陶しいな。あんまりごちゃごちゃ言うなら別れるぞ。お前みたいな地味な女と遊んでやっているだけで有難いと思えよ。」とするりと動いた。
すると、目の前の黒髪の女は泣きじゃくりながら、殆ど叫ぶようにこんな事を言って来た。
「周りに幾ら止められても、あなたを信じて5年も尽くして来たのよ…。私の時間を返してよ!借金までしてお金をあげたのに…。ねえ。今、言ったのは嘘でずっと私と一緒にいてくれるわよね?」
「ウザいんだよ!お前は!」
そう暁治の口が勝手に動いたかと思うと、手は独りでに近くにあった灰皿を掴んで、その修羅場になっている女の頭に向かって大きく振りかぶった。
ゴッ
そう嫌な音が響いたかと思うと、女は崩れるように倒れて、頭からはダラダラと血を流し始めた。
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