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ガバッと暁治は跳ね起きた。彼は背中にたっぷりと汗を搔いていた。
「なんだ、夢か…。良かった…。」
暁治は思わず、そう呟いた。彼は先ほど見たあまりにリアルな夢をとぎれとぎれに思い出してしまい背筋を震わせた。
あの夢の中の女の頭を灰皿で殴った時の感触が鈍く残っているような気がして、暁治は気持ちが悪くて、ベッドのシーツで何度も手の平を拭った。
その時、急にコンコンと玄関のドアがノックされたような音が鳴った。
(こんなに夜中にノック?一体、何なんだ?まさか…。)
そう思って半ばパニックになって動けないでいる彼を置いて、どんどんノックは激しくなって行く。これだけ激しくノックをされていたら、周りの住民にも聞こえていそうなのに、誰も動き出す気配すら無かった。
「ねえ。」
その声は玄関の向こうから話し掛けられているような気もしたし、すぐ傍で話し掛けられているような気もした。
「ねえ、あなたは私が部屋の中にいるのが嫌みたいだから、ちゃんと外にいてあげたわ。私、凄く良い恋人でしょう?だから、ずっと一緒に居られるわよね。」
「なんで返事をしてくれないの?」
「私を無視するの?」
「あなたは私を捨てたりはしないわよね。」
そう次々掛けられる言葉に、暁治は何も言葉を返す事が出来ず、ただ凍り付いたかのように固まって、朝が来るのを待った。
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