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今日は、雨だ。
私は今バスの中だ。今日私は地元から離れる。
私は産まれてからずっと実家で暮らしてきた。
お母さんとお父さん、妹の4人でずっと暮らしてきた。3年前に妹は結婚をしたが、結婚をしても実家を離れることはなく、旦那さんとともに暮らし続けた。私は28歳の今でも家族のいない生活が想像できない。
そんな私が地元を離れる理由は、結婚だ。
相手は東京にいる。地元の幼馴染の彼と私は彼が地元を離れてからもずっと付き合い、結婚をした。
そして彼の仕事に合わせて私は今実家の最寄り駅へバスで向かっているのだ。
このバス、雨が降ると必ず混んだよな。しかも遅れる。学生の頃良く母に早く支度しないと遅刻すると叱られた。懐かしい。私は、バスの車窓から見える景色に思い出を重ねた。あのケーキ屋さんのケーキで誕生日を祝ってもらい、あの飲食店でご飯を食べ、おもちゃはいつもあの店で買う。
いくらでも、いくらでも思い出が溢れてくる。
私は懐かしさで心が温かくなった。
バスを降りて電車に乗り換えた。東京に向かう電車の車内は比較的空いていた。みんな自由な時間を楽しみ目的地で降りていく。雨の町並みは潤い、霧がかっている。私はこれからのことを考えた。
果たして彼と一緒に幸せな家庭を築けるのだろうか。私は母さんみたいに立派な主婦になれるのかしら。私は不安になり泣きたくなってきた。
その時だ。ぼんやりと見ていた窓の外の景色に異変を感じたのは。なんと10センチくらいの人が5人背中に羽根をつけて、手には、楽器を持ち何やら楽しそうに飛んでいるのだ。頭には、雨粒みたいな被り物をしている。
私はとても気になった。ちょうど次の駅が近づいていたので迷わず下車した。私は導かれるようにホームのベンチに座った。すると、ふわふわと飛んできた小人さんたちは私の目の高さで整列した。
「私たちは雨の鼓笛隊です。雨の音楽会へようこそ。あなた、何で悲しそうなの。」
私は小人に結婚して実家を離れる不安で悲しくなったと伝えた。
「まだ見ぬ世界に悲しみはないよ。幸せがいっぱいあるんだよ。だから悲しまなくて大丈夫。」
小人さんたちは私にお辞儀をすると結婚式で流れる曲を演奏してくれた。鈴みたいなきれいな音がした。
小人たちは音楽に合わせ踊りながら曲を演奏する。
ひとりみんなとテンポがズレてしまう小人がいて必死に頑張る姿がいとおしかった。4曲が終了したところでまた小人さんたちは私の目の前で整列した。
「次は最後の曲です。私達が、雨の日に泣いちゃう子に良く演奏する曲です。」
雨の音に合わせてゆっくりとはじまった曲は、「あめふりくまさん」だった。幼い頃雨が降ると、保育園に行きたくないと愚図る私に母さんが歌ってくれた歌だ。私は泣いた。母さんのところに帰りたい。
演奏が終わる頃、小人さんたちは、私の頭を撫でてくれた。空は雨が止み晴れてきている。
ハンカチで涙を拭いている間に小人さんたちはいなくなっていた。空には、虹が架かっている。
私は大丈夫だ。みんなの温かい想いを胸に彼と温かい家庭を作っていける。悲しくなったら、「あめふりくまさん」を歌おう。
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