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 「少年探偵団の三人がいなくなったってこと以外は、ほとんど何も知りません」  「最初に事件が起こったのは今から約半年前。ちょうどあの丘の上に碌迷館が現れたのと同時期だ。いなくなったのは七歳から十二歳までの子供五人。彼らはいなくなる直前に仲間たちに『今度、碌迷館に行くんだ』と自慢していた。そしてこの事件をきっかけに、街では子供の失踪事件が相次いで起こるようになった。現在把握できているだけでも三十人ほどの子供がいなくなっている」  「警察はまだ犯人を見つけていないんですか」  「連続児童失踪事件として市民の間ではまことしやかに語られているが、残念ながら失踪したのは、みんな孤児だから警察は動いてくれない。この街じゃ孤児の扱いは犬以下だからね」  「そんな…」  「それに」と諸戸は続ける。「失踪した子供たちは一カ月ほどで戻ってくる」  「戻ってくるならそこまで心配する必要はないんじゃないですか?」  茉莉の言葉に諸戸は首を振った。「失踪した子供たちは帰ってくると、なぜかみんな凶暴になっているんだ。最初に失踪した五人の子供たちは放火や恐喝、強盗、殺人などで全員矯正院行きになった。彼らだけじゃない。戻って来た全員がだ。優しい子も、思いやりのあった子も、気弱な子も、どんな子供だろうが例外なく」  茉莉の脳裏にとある光景が蘇って来た。この世界にやって来た時にいちばん最初に見た光景だ。  着物姿の女性や、学生服を着た男の子、スーツの男性たちが興奮した様子でしきりに何かを言い合いながら、大通りを駆けていく姿。  『人殺しだとよ』  『犯人は子供らしい』  『またガキの犯罪か』  たしか彼らはそんな会話をしていなかっただろうか。まさか自分が大通りに立っていたまさにあの時、失踪していた子供による犯罪が行われていたのではないか。  ぞくり、とうなじの毛が逆立つのを感じた。
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