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 「思い当たる節があるようだね」  「芳雄は七歳の時に人攫いにさらわれて、炭坑に売られそうになっていたところを、碌迷館の主人である畔柳(くろやなぎ)博士に拾ってもらったと言っていました。もしかすると芳雄は畔柳博士に、子供を連れてくるよう脅されているのかもしれません」  「その可能性はあるだろうね」諸戸が頷く。「ワシは彼について調べてみるが、君はもう碌迷館には近づかない方がいいだろう」  「私も一緒に行きます」茉莉は諸戸の目を見つめながら言った。「芳雄を助けたいんです。それに、少年探偵団のみんなも」  『ノスタルジア』は茉莉が現実世界で辛い時や悲しいことがあった時、いつだって画面の向こうから励ましてくれた。芳雄や諸戸、少年探偵団のみんなにどれだけ救われたか分からない。だから彼らが困っているのなら今度は自分が救いたいと思った。  「しかし…」  「私なら芳雄を説得できるかもしれません」  諸戸は少しの間茉莉の瞳を見つめたあと、肩をすくめた。「分かった。ただし危険なことはしないように」
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