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 三人は一列に並んで階段を上って行った。  五分ほど歩いた頃だろうか、芳雄が足を止めた。彼の前には純金製の錠前がかかった赤い扉があった。  芳雄が懐から取り出した鍵を差し込んで開錠する。「この時間、畔柳博士は別室にいるので、今のうちに助け出しましょう」芳雄は小声でそう言って扉を開いた。  扉の先には広いドーム状の部屋があった。  ガラス張りの天井から降り注ぐ青白い月の光。分厚い書物や、赤や青の蛍光色の液体が入ったフラスコなどが載った机。床に散乱している実験の記録用紙。ゴトゴトと音を立てて回転する大きな歯車の群。絶え間なく何かを計測している巨大な機械。  そしてそれらの中央には、長方形の棺のようなものが五つ床の上に並んでいた。棺の側面から伸びた何本もの管は巨大な機械につながっている。また棺の天井部はガラス張りになっており、それぞれの棺にトオル、マルオ、シゲルの三人が横たえられているのが見えた。  残り二つの棺は空だった。もしも昨日、芳雄に誘われるまま碌迷館に入っていたら、自分もこの二つの棺のどちらかに寝そべっていたに違いない。そう考えると、茉莉はうなじの毛がぞっと逆立つのを感じた。  「トオル、マルオ、シゲル…!」諸戸が棺に駆け寄る。  三人が諸戸の呼びかけに答えることはなかった。深い眠りの底にいるようでぴくりとも動かない。降り注ぐ月光が少年たちの肌を青白く照らしていた。
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