1、クリオネの友だち

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1、クリオネの友だち

「た、たすけーーて! だれーーかーー」  もがいても、もがいても。体が重くて浮かばない。  はるか深い海の果て。真っ青な水の底へ沈んでいく。  これが、走馬灯(そうまとう)っていうやつかな。遠い記憶で出会った、神様が見える。  キラキラしてて、時間が止まっているみたい。  わたし……、ここで死ぬのかな。  そのとき、ザバーンッと水しぶきを上げて、いきおいよく水面へ飛び出した。 「ゴホッゴホッーー」  せき込みながら、そっと目を開ける。  あれ……? 誰かの肩に乗っかって、水の中を歩いていく。  少し水を飲んじゃったけど、呼吸が落ち着いてきた。わたし、助かったんだ。  数秒たって、まわりのざわつきに気がついた。クラスの子たちが集まってきて、何か話している。  ちょっと待って。黒い水泳帽に、この整った横顔は、もしかしてーー。 「足、もうつくだろ」  プールの端あたりまで来て、おんぶされていた体がストンと降ろされた。  やっぱり。助けてくれたのは、同じ五年三組の霧谷(きりや)叶斗(かなと)くんだったんだ! 「ご、ごめ……、ありが……ブォアッ」  あわてた拍子に足がすべって、ドボンと水の中で転がる。アップアップと水面へ顔を出したときには、霧谷くんはプールサイドへ上がっていた。  ゆっくり歩きながら、プールのへりをつかむ。よかった。思い出すだけで、ゾッとする。  カナヅチであるわたしーー、花池(はないけ)美波(みなみ)は、本日水泳の授業で死にかけました。
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