カウンタークロックワイズ

16/25
前へ
/25ページ
次へ
だがある時、結婚する気があるのか聞かれて、俺は正直に、「どっちでもいい」と答えた。 意味としては「お前がしたいならする」と言ったつもりだったのだが、どっちにしろアウトだったらしい。俺はその場でフられた。 一応、ショックは受けた。何が悪いのか分からなかったからだ。相手の気持ちになって考えるのが優しさだと、学校では習ったのに、相手のしたいようにしようとしたらフられてしまった。 恋愛シミュレーションゲームは、ほとんどして来なかった。誰かが持ってきたのを触った事はあるが、選択肢を間違えて女の子を悲しませると、モテないレッテルを貼られてイジられるのが鬱陶しくて、面倒臭かった。 きちんと攻略していれば女心が理解できたのかも知れないが、ひたすら文字を読んでスチルを集めるより、動きの多いゲームの方が楽しかったのだ。 社長の口利きだったためにその会社には居づらくなり、同業の別会社に転職した。幸運なのか、皮肉なのか、転職先の方が給料が良かった。しかも、電車に乗らず原付で通える距離だった。 俺には学習能力が無いのか、何度かそういう経験をしている。会社を変わるとまでは行かずとも、正直に伝えた結果、相手を傷付けるか、フられてしまう。人として、どこかがバグっているのだ。 神戸に帰ってきたともやんは、そんな俺が彼女と別れた話を聞く度に、手を叩いて笑い転げた。落ち込んでいたはずの俺も釣られて笑って、どうでもよくなった。 (まなぶ)だけに学んだのは、その気もない女の子と、あまり仲良くなるべきではないという事だ。 歳を取るにつれ、だんだん人への興味も薄れてしまい、最後に付き合っていた女の子には「うちに興味ないんやろ」とはっきり言われてしまった。それ以来、彼女と呼べる相手はいない。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加