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すると、ともやんは仰向けになり、俺の部屋を改めて見回した。
俺も一緒に見回す。明かりを消しても、カーテンの隙間から漏れてくる街灯の光で物の形が分かる。
見慣れていて意識していなかったが、改めて見ても狭さの割に物が多い、散らかった、汚い部屋だ。
掃除も気になった時にしかしないし、ともやんの布団を敷くために、床にあった物を壁際に寄せたくらいだ。部屋の隅には、夏から置きっぱなしの扇風機が立っている。
これに関しては、正しい暮らし方だと胸を張る事はできない。
「ここはええわ。オレここがいい」
そんな部屋の真ん中で、ともやんは平然と言った。
「何でやねん」
「落ち着くねん。自分ん家よりおる時間長いもん、ヘタしたら」
「それはまあ、そうやな」
これが逆の立場だったら、俺はそうは言っていないだろう。
井上さん家に行った事は片手で数えるくらいしか無いが、知っている。
大きなマンションの高層階にあり、フローリングで、花瓶に花が生けてあって、スリッパを履いて生活するような家だ。
ちゃんと綺麗に、そしてお行儀よく過ごさなければならない気がして、トイレを借りるのすら、子供心に緊張したものだ。
ともやんがウチに遊びに来た時はどう思っているのだろうかと、聞くに聞けなかった。その答えが、今になって聞けた。
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